Monday, September 26, 2011

26/09 春秋


春秋

2011/9/26付
 船長は「天気図」とあだ名されるほど、気象に詳しかった。「台風15号はすでに通過した」と判断し、客を乗せて出航。その日の夜、悪天候で船は横転する。死者1000人を超す青函連絡船洞爺丸の事故は、57年前のきょう起こった。
▼大海原の真ん中での遭難ではない。場所は函館湾の内、陸地と目と鼻の先。レーダーも装備し、当時としては最新鋭の貨客船だったそうだ。それがなぜ多くの命を道連れに沈んだのか。科学技術振興機構が作成し、いまもネット上で読める「失敗知識データベース」が事故の経緯を分析し、教訓を引き出している。
▼台風の強さや動きが常識外れという不幸があった。本州と北海道を結ぶ幹線輸送を担う責任感も働いた。しかし「優れた人間でもその判断を超えるような自然現象が生じることもある」。少しでも危険を感じたら安全側を選ぶ。これまでの想定を上回る厳しい条件での対処法を日ごろから準備せよ。そう提言する。
▼データベース作成の指揮者は畑村洋太郎氏。成功物語より失敗例からこそ学べ、とする失敗学の提唱者だ。その畑村氏のもとで原発事故の検証が進んでいる。津波、台風と災厄が続く。明と暗、生と死を分けたものは何か。それぞれの場で、せめてきちんと検証することが、失われた命を生かすことにもつながる。

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