Monday, June 27, 2011

27/06 よみうり寸評 - 芭蕉の言う「千歳の記念」は「世界の記念」になった


6月27日付

 〈五月雨のふりのこしてや光堂〉――岩手県平泉町の中尊寺金色堂を芭蕉はこう詠んだ。元禄2年(1689年)のことだった◆すべてのものは雨で朽ちるが、ここだけは降り残したように長い風雪に耐え、光り輝いている。その美しさに感嘆した句だ◆「奥の細道」には「光堂は(藤原)三代のひつぎを納め……四面新たに囲み、いらかを覆いて風雨をしのぐ。千歳せんざい記念かたみとはなれり」と記した。それからさらに322年を経たきのう、中尊寺や毛越寺など「平泉の文化遺産」が世界文化遺産に登録が決まった◆平安時代に奥州藤原氏が築いた寺院や庭園などの遺跡群は「極楽浄土信仰に基づいて現世に浄土空間を表現した」と評価された◆芭蕉の言う「千歳の記念」は「世界の記念」になった。日本の世界文化遺産は12件目、東北では初。自然遺産を合わせると24日に決まった小笠原諸島を含め16件◆東日本大震災の3・11以来、多難な日々の東北を力づけるような世界文化遺産の登録だ。平泉だけでなく広く東北復興のバネにしたい。
(2011年6月27日13時52分  読売新聞)

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