Sunday, June 26, 2011

27/06 世界遺産を持つ誇りと責任

2011/6/27付

 平泉(岩手県平泉町)と小笠原諸島(東京都小笠原村)が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されることが決まった。
 登録をきっかけにして観光客を集め地域の活性化を図りたいという声は大きい。それは当然だろうが、世界遺産とはそもそも、全人類の財産として後世に残すにあたいすると国際的に認めるという趣旨で選ばれるものだ。誇りに思うと同時に保全にも十分気を配り、責任をもって次の世代に伝えたい。
 中尊寺金色堂などで知られる平泉は仏教の浄土思想を現世の空間に表現したとして、文化遺産に登録される。一方、「東洋のガラパゴス」とも呼ばれる小笠原諸島は、大陸と一度も陸続きになったことがないことから、ここにしかいない固有の動植物が多いことが評価され、自然遺産に登録される。
 二つを加え、日本の文化遺産は12件、自然遺産は4件になる。
 世界遺産になると、期待できるのは観光への波及効果だ。とくに平泉は東日本大震災の影響で、ことしの大型連休の観光客が昨年より8割も減った。文化遺産への登録は復興への励みにもなろうし、古来東北に高い水準の文化があったことをあらためて知る契機にもなるだろう。
 ただ、過去に登録された地域では、ゴミや車が増えて環境に悪影響を与えたり、登録後に急増した観光客数がしばらくすると減ってしまったりという例がみられる。一時の流行ではなく魅力をどうアピールしていくか。他方で、環境を守るための対策はどうするか。そうした点に知恵を絞らねばならないし、訪れる人にも自覚と協力が必要だろう。
 小笠原諸島では野生化したネコやヤギ、トカゲなど生態系を脅かす外来種の駆除が喫緊の課題だ。登録後も、豊かな自然を守る試みが停滞するようなことがあってはならない。
 日本はつぎに富士山や鎌倉(神奈川県)の文化遺産登録を目指している。ただ、世界遺産はすでに900を超え、ユネスコは数をあまり増やさない方針をとっている。平泉も一度落選し、今回は再挑戦だった。
 世界に向け、テーマの独自性や希少性を分かりやすく説明するための戦略が、より重要になっている。

No comments:

Post a Comment