Saturday, June 25, 2011

25/06 よみうり寸評 - 地道な取り組みが、「想定外」の被害軽減につながることを期待したい


6月25日付

 〈大仏の御腹のなかへは御父さまもまだはいった事がない 御前方はいい事をした〉。文豪・夏目漱石は1912年、鎌倉で夏休みを過ごす長女に東京からそんな手紙を送った◆胎内拝観ができることで知られる鎌倉・高徳院の大仏は台座を含めた高さが13メートル超。かつてその大仏を覆って立っていた大仏殿の高さは、礎石跡の調査から40メートル近くもあったと推測される◆室町時代などに記されたいくつかの文献が、大仏殿の倒壊に触れている。15世紀末、大地震による津波で押し流されたという趣旨の記述もある◆東日本大震災を受けて、国の中央防災会議の専門調査会が、あらゆる学術的な情報を検討して津波被害を想定するよう求める中間報告骨子をまとめた◆東北地方では、平安時代の貞観じょうがん地震の大津波に関する研究成果がありながら、自治体の防災対策に十分生かされていなかった◆古い地層の痕跡や文献の記録から、災害の歴史をひもとく。地道な取り組みが、「想定外」の被害軽減につながることを期待したい。
(2011年6月25日13時43分  読売新聞)

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