自然エネルギーで定款に事業追加
ソフトバンクは24日の定時株主総会で、自然エネルギーなどによる発電を事業内容に加える定款変更を承認した。原子力発電所事故を受けて「脱原発」を掲げる孫正義社長が、発電事業に乗り出す“お墨付き”を与えられたことになる。クリーンエネルギーの普及に一役買う一方、本業である通信事業との相乗効果など、様々な思惑も見え隠れしている。
孫社長、首相と頻繁に面会
孫社長は株主総会で、「原発の代わりになるエネルギーを一日も早く作らないとならない。日本の問題解決に向かいたい」と訴えた。東日本大震災後の3月22日に福島県の避難所を訪れて問題意識を持ち始めたといい、4月20日には自然エネルギーの普及を促す「自然エネルギー財団」を私財で設立すると表明するなど動きを活発にしている。
今国会に提出中の「再生可能エネルギー特別措置法案」は、太陽光や風力などの発電の全量を電力会社が高い価格で買い取る仕組みが盛り込まれている。法案が成立すれば、原発に比べて圧倒的に発電コストの高い自然エネルギー発電にもビジネスチャンスが訪れる。
さらに、IT(情報通信)技術で電力の需給を自動調整する「スマートグリッド(次世代送電網)」が進展すれば、通信事業との相乗効果も期待できる。すでにIBMやグーグルなどはスマートグリッドに参入している。孫社長は株主総会で「以前はピンと来なかったが、さすがグーグルだなと思う」と述べ、参入を目指していることを示唆した。
一方、産業界には、頻繁に菅首相と会うなどの政治的な動きに、「電力会社の発送電分離を求め、東京電力の送電事業の買収を狙っているのではないか」といぶかる声もある。送電網は通信インフラとして活用できるとの見方もある。
孫社長は昨年、光回線などのブロードバンド(高速大容量通信)網を全世帯に普及させる総務省の「光の道」構想に乗じ、NTTグループからの光回線事業の完全分社化を迫った経緯がある。分社化は見送られたが、NTTは光回線を他社に貸し出す際の接続料で大幅な値下げを強いられた。
ソフトバンクは今夏にも、大規模太陽光発電所(メガソーラー)の事業化に向けた子会社を設立し、年内にも発電所の建設に着手する考えだ。7月に設立予定の「自然エネルギー協議会」には34道府県が参加を表明している。電力業界に風穴を開けられるかどうか、今後の動きが注目される。
(2011年6月25日 読売新聞)
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