先月、何年ぶりかで台北の故宮博物院を訪れ、様変わりに驚いた。あまりに中国人の入場者が多かったからだ。あちこちで旗を持ったガイドがツアー客に中国語で説明している。故宮には中国の歴代王朝の宝物が多数展示されているので、中国の人たちが一目見たいと思うのは当然だろう▲ただ、いただけないのは、大声でおしゃべりする人が多いことだ。中国人客が増えるにつれ、参観マナーが問題となってきた。対策として、職員が「請軽声細語(お話は小さな声で)」と書いた案内板を掲げて館内を回り、注意を呼び掛けている▲中国の観光客が台湾を訪問できるようになったのは、3年前からだ。対中交流に力を入れる国民党の馬英九政権が、団体旅行に限って認めた。昨年の中国人観光客は163万人に上り、初めて日本人を抜いて1位となる▲馬政権は間もなく、個人旅行も解禁する方針だ。中台間の直行便も、週370便から550便以上に増便する。これで中国人客はますます増えるだろう▲日本も一昨年、中国人の富裕層を対象に個人観光客を受け入れた。昨夏には中間層にも広げ、昨年1年間に日本を訪れた中国人客数は4割も伸びている。今年はさらに増加が見込まれていたが、東日本大震災でキャンセルが相次ぎ、4月の中国人客は前年に比べ半減した。訪日外国人客全体では6割の大幅減となる▲震災から3カ月、ようやく回復の兆しも見えてきたようだ。関係機関が協力し、世界の観光客を呼び戻したい。海外の人たちに日本を直接見てもらうことは、震災からの復興ぶりを国際社会にアピールするいい機会にもなるはずだ。
毎日新聞 2011年6月12日 東京朝刊
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