6月12日付
「はだかは御法度 /外国人に笑わるるな」「立小便/以 ての外」。明治初期の新聞には、こうした政府のお達しが度々登場する。開国後、やってきた西洋人の侮蔑の目に、直ちに旧習を改める必要を痛感したのであろう◆日本人としての振る舞いを、政府は「作法要項」として学校で教えた。通知表は国語の上に「修身」があり、その上に「操行」つまり作法があったほどである。横山験也さんが『明治人の作法』(文春新書)に書いている◆作法要項は挨拶や敬礼、服装、食事、訪問迎接など多岐にわたる。これらの根底には、自らの分をわきまえ、相手の分(御分 )に敬意を払うという、古来変わらぬ日本人思想が流れていた◆大震災後、海外メディアからは「強奪も暴動も起きない」「我慢強く耐える姿に驚いた」と称賛された。多くの支援や声援も寄せられた。これらも御分の文化と無関係ではあるまい◆3か月がたち、原発避難者の留守宅などを狙った侵入盗が4割も増えているという。義援金募集をかたる詐欺や、M資金をエサにした融資話などがまたぞろ被災地を駆け回っていると聞く。これは情けない。
(2011年6月12日01時08分 読売新聞)
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