この大変な時に、いったい何をやっているのか。日本中が「またか」と怒り、あきれているに違いない。
メガバンクの一角、みずほ銀行でコンピューターシステムの大規模な障害が起きた。振り込みなど100万件を超す資金決済が滞り、一時はすべての現金自動出入機(ATM)やネットによる取引も止まった。
給与振り込みが集中した25日は何とか乗り切ったようだが、発生から10日余りたっても完全には復旧していない。振り込みでは、たとえば入学金が大学の口座に応急処理で入金されたが、誰が入金したのか分からない、といった問題が残る。
休日返上で人海戦術によるデータ修復を急ぐというが、被災地をはじめとする日本の大ピンチに、その足を引っ張っている。この状況に早く終止符を打たねばならない。
支払いが確定しないために不利益を被る利用者が出た場合など、損害の賠償に誠意をもって当たるべきことはいうまでもない。月末は多くの企業の決算期末でもある。混乱の再発は絶対に許されない。
世間が「またか」と思うのは、2002年4月に富士、第一勧業、日本興業の3銀行の合併で、みずほ銀行が発足したとたんに大障害を起こした記憶がよみがえるからだ。250万件の処理が滞り、復旧に1カ月かかった。その反省は生かされなかったのか。
前回はシステム統合のテストが不十分だった。今回は震災の義援金の振込件数が一部の支店で所定の枠を超え、システムにエラーが起きたらしい。だが、他の銀行は難なく処理している。システムを調整しておかなかったのは人災だという見方もある。
処理に手間取り、雪だるま式に影響が広がったのは前回と同じだ。問題のある処理作業を分離して、後続の処理を滞らせずに済むようなシステム構造になっていないためという。
前回の失敗の教訓を生かすなら、ずっと以前にここを改修しておかなければならなかったはずだ。それができなかったのは、発足時の経営陣が責任をとらず、根本的な問題を長い間放置してきたからではあるまいか。
出身行ごとの派閥争いがやまず、特定の人脈が経営を牛耳ってきた。内部の駆け引きでエネルギーを消耗し、世の動向に疎くなり、失敗を繰り返す。そんな体質を根本的に改革しなければ、再発防止はおぼつかない。
西堀利頭取は全国銀行協会の会長就任を延ばすだけで頭取にとどまるのではないかとの観測も周囲にある。利用者は、あいた口がふさがるまい。
経営者の引責も、再発防止への保証とはならない。だが、そんなことすらできないのに銀行の体質が変わると信じる人が、どれほどいるだろうか。
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