極めて遺憾であり、日韓関係の将来に大きな禍根を残す愚行としかいいようがない。韓国の李明博大統領の竹島(韓国名は独島)訪問である。
日韓双方が領有権を主張する竹島を、韓国の大統領が訪れたのは初めてだ。日本側の中止要請を無視し、李大統領が訪問を強行した背景には、政権浮揚のための国内対策や、旧日本軍の従軍慰安婦問題の対応をめぐる日本政府への不満があったとされる。
竹島は1905年に島根県に編入された経緯があり、韓国では日韓併合の負の歴史と重ねてとらえる傾向が強い。国民の関心は極めて高く、ただでさえ「反日」感情をあおりやすい。
李大統領の竹島訪問は、たとえ政権の求心力回復をねらう切り札だったとしても、日韓関係にとって得るものは何もない。互いの国民感情を著しく損ね、将来の関係修復を一層難しくしただけだ。日韓関係への外交的な配慮があまりになさ過ぎたのではないか。
李大統領はかねて、実利優先の立場から日韓の未来志向の関係づくりを唱えてきた。歴史問題には深入りしない姿勢をとってきただけに、極めて残念だ。
日本政府が厳しく抗議し、相応の対応をするのは当然だ。ただ感情論に左右されず、冷静に対処していく必要もある。
なにより日韓は互いに主要な貿易相手国だ。北朝鮮の核問題をはじめ、北東アジアの安全保障分野でも協力していかなければならない隣国である。長期的な視野に立って対応していくのが望ましい。
日本の政権が弱体化し、韓国に限らずロシアや中国など周辺国から足元を見透かされていることも見過ごせない。領土問題は国益に直結する懸案だ。超党派で真剣に議論していくべきだろう。
2012/8/12付
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