2012年1月31日
福島県での放射性物質の除染事業に、大手ゼネコンが本格的に乗り出している。国が発注する大がかりなものに加え、規模の小さい自治体の事業も受注している。「将来性」を見込んでいるためだ。地元業者は「仕事を奪われる」と危機感を募らせる。
27日、雪が降り積もる福島市郊外の民家の庭や小学校のグラウンドで、ヘルメットにマスク姿の作業員が土をスコップで削りとっていた。それを袋に詰め、トラックで運び出す。
福島県による除染モデル事業だ。県内業者を含む18社が案を出したが、昨年11月に受注したのは大手ゼネコンの大成建設。県除染対策課は「低コストで技術力もある」と評価した。
除染を発注するのは、放射線量の高い一部地域では国で、残りの地域は市町村だ。県はモデル事業で有効な手法や採算性を研究し、結果を市町村に伝える。
国のモデル事業を受注しているのは、いずれも大手ゼネコン中心の企業連合。今のところ手作業が中心で、大手の技術力を生かせるケースは少ない。地元では「大手は規模の小さな自治体発注の除染事業まで手を出さない」(建設業者)とみられていた。
だが、県のモデル事業も大成が受注し、福島市による今月中旬の3地区の事業の一般競争入札でも、大手・準大手が受注した。
大手幹部は「もうけは少ないが、早めに実績を作り、今後の受注競争で優位に立ちたい」。県内59市町村のうち40市町村が除染を検討中で、これから発注が本格化する。大手は、経験を積めばコストを下げられ、収益を生む事業に改善できるとみているのだ。
「土壌改良や汚染水浄化などの関連事業が除染から生まれる」(準大手関係者)との期待もある。除染に強いイメージを築いておけば、こうした事業の受注でも有利になるとみる。
自治体が大手を重視するのは「民家から山林まで幅広く対応できるから」(福島市の担当者)だ。そこで組合を作って受注し、加入業者に得意な地域を割り振ることで、ゼネコンの総合力に対抗する。県内では、伊達市、南相馬市、川内村でも同様の組合ができている。(内藤尚志)
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