社会保障審議会の年金部会で3案提示
厚生労働省は、厚生年金の支給開始年齢を将来的に68~70歳に引き上げることを念頭に、11日の社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で三つの案を提示した。
同省は、年内の改革案取りまとめを目指す。
厚生年金の支給は、男性は2025年度までに、女性は30年度までに、それぞれ60歳から段階的に65歳まで引き上げ、基礎年金と合わせることがすでに決まっている。
だが、厚労省は、少子高齢化の急速な進展などを念頭に、年金財政の安定化のためには年金支給開始年齢を一層引き上げる検討に入る必要があると判断した。 3案は基本的に、年金が受給できる年齢を遅らせ、そのスピードをどう速めるか、度合いをそれぞれ調整したものだ。
具体的には、〈1〉厚生年金の支給開始年齢を3年に1歳ずつ引き上げる既定スケジュールを「2年に1歳ずつ」に前倒しし、65歳に引き上げる〈2〉厚生年金を現在のスケジュールで65歳まで引き上げた後、基礎年金と併せて支給開始年齢を3年に1歳ずつ引き上げ、68歳に引き上げる〈3〉2年に1歳ずつ前倒しして65歳まで引き上げた後、さらに同じく2年に1歳ずつ引き上げ、両年金の支給開始年齢を68歳に引き上げる――との内容だ。
3案のいずれかが実現すれば、支給開始年齢は変わり、老後の生活設計も大きく変わる。例えば、現在40歳の男性は、3案のいずれでも60~64歳の間は年金支給対象とはならず、65歳になって現行と〈1〉案で支給対象となるが、〈2〉、〈3〉の両案では68歳にならないと、年金を受け取れない。
政府・与党が6月にまとめた社会保障・税一体改革の成案では、支給開始年齢の68~70歳への引き上げを視野に検討する方針が盛り込まれ、70歳までの引き上げを想定した議論もある。
ただ、開始年齢引き上げは、高齢者の雇用対策の充実が前提との反対論も経済界や労働界から出ている。
一方、同日の部会では、60歳以降も会社員として働き続けた場合、賃金に応じて厚生年金支給額を減額する在職老齢年金制度の見直し案も示された。60~64歳で年金と給料の合計が28万円を超えると、年金が減額されることに「働く意欲を阻害している」との批判があるため、減額対象の限度額を65歳以上と同じ46万円とする案などが示された。
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(2011年10月12日 読売新聞)
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