Sunday, July 31, 2011

31/07 天声人語

2011年7月31日(日)付

 夕立の雨脚は白く光り、古来「銀の竹」や「銀の矢」に見立てられてきた。梅雨明けの炎暑から一転し、雷鳴に驚き、豪雨への警戒が続く7月の言葉から▼転校などで野球部員が減った福島県の3高校が「相双連合」チームを組んで県大会に出た。初戦で1―8と敗れたが最後に得点して一矢を報いた。服部芳裕監督(52)は「この先、苦しいことが待っているかもしれない。でも、お前らはできる。最後の1点がそれを証明した」▼歌舞伎の中村吉右衛門さん(67)が人間国宝に。歳(とし)を重ね、精神が充実すれば体は衰える。そんな矛盾に抗(あらが)い、「80歳で本公演の25日間、勧進帳の弁慶を務めるのが夢。常に上を向き、高みを目指さねば落ちていく」。その夢は歌舞伎ファンの夢でもある▼困ったときは玄関に掲げて、と宮城県登米市の佐沼警察署が仮設住宅のお年寄りに手作りの黄色い旗を配った。「幸せの黄色いハンカチではないが、心の支えになりたい」と三宅直希・地域課長が言う▼東大を退職した社会学者上野千鶴子さんが特別(最終)講義。「超高齢化社会が来てよかったと思っている。かつて強者であった人も、最後には誰かに支えてもらわないと自分の生を全うできない。強者も、自分が弱者になる可能性を想像しなければならない社会だから」▼「しょう来、がんになりませんように」。七夕の短冊に福島の小2女児が書いた願いに胸が痛む。金銀砂子(すなご)の星々には、明るい願いこそ似合う。安らぐ日々が早く戻りますよう。

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