6月13日付
仏教では死後の百箇日を〈卒哭忌 〉と呼ぶ。哭は大声をあげて泣くことだ。子を亡くし、親兄弟、配偶者を亡くして人は泣く◆が、百日たったら泣くのをやめようというのが卒哭。いつまでも泣き続けていると、天界で亡き人が持つ灯火 がその涙で消えてしまうなどと言われている◆〈四十九日〉は死者が今生の死の後、来世の生を得るまでの日数だという。さて、東日本大震災から3か月を過ぎて、12日現在7937人がなお行方不明のままだ。四十九日、百箇日をどう受け止めればいいか。多くの人の心が揺れている◆被災地の自治体は震災3か月を区切りに行方不明の人を「死亡」と見なし、遺族に支払う災害弔慰金の支給対象を行方不明者の家族にも広げた◆が、「せめて遺体と対面するまでは……」と受け取りをためらう人。「本当は夫の死を認めたくない。でもこのままでは生活できない」と割り切れない思いを胸に申請した人◆それぞれにつらいことだろう。いつ割り切れるか。そこに「一定のメド」などはない。
(2011年6月13日13時46分 読売新聞)
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