Friday, May 27, 2011

番外編(下)年金分割 失うものに注意

厚生労働省の人口動態統計によると、2009年の離婚件数は、前年比0・9%増の25万3408組。ただ、同居期間20年以上の離婚数は同3%増、35年以上に限ると同7・9%増となっている。
熟年離婚の増加が目立つなか、離婚した場合に年金を分割する仕組みを詳しく知りたいとの声も届いた。
離婚時の年金分割は07年4月から始まった制度だ。社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの菅野美和子さんは「夫婦だった期間中の年金記録を分け合い、年金額の多い人から少ない人に分割する仕組みです」と話す。
 分割される記録は07年4月以前の夫婦期間も対象。事実婚の夫婦にも、原則として適用される。ただし、分割されるのは厚生年金や共済年金だけで、基礎年金は対象外。独身時代の分も分割されない。
会社員の夫と専業主婦の妻を例に考える。分割の割合は、2人の話し合いで決めるのが原則で、妻の取り分は最大でも半分までだ。合意すれば離婚後2年以内に年金事務所で手続きを取る。合意できない場合は家庭裁判所に申し立てて分割割合を決める。
ただし、08年4月以降の夫の厚生年金記録については、妻が年金分割を請求すると、合意がなくても自動的に、記録の半分が妻に分割される。
厚生労働省のまとめでは、09年度の場合、年金分割によって分割を受けた側の年金額は月3万1337円増えた。
年金が増えるのはありがたいが、「失うものもある点に注意して」と菅野さんは指摘する。夫婦のままなら年金の上乗せ分を受け取れる場合があるが、別れてしまえばもらえない。夫が死んだ際の遺族年金も受け取れなくなる。また、妻が60歳未満の場合は、離婚後は国民年金保険料を自分で払う必要が出てくる。
こうしたデメリットも考慮したうえで離婚を考えるなら、情報収集が大事だ。50歳以上の人は、分割をした場合の年金見込み額を年金事務所で試算してもらえる。離婚前なら、こうした請求をしたことは相手に通知されない。
(このシリーズは、田渕英治、斉藤保が担当しました)
◇離婚時の年金分割の3か条
・分割対象は厚生年金や共済年金だけ
・受け取れるのは結婚期間中の最大半分まで
・遺族年金が受け取れないなどのデメリットも
(2011年5月27日  読売新聞)

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