2009年9月28日
前回は、子持ちのサラリーマンについて、生命保険加入のポイントをお話しました。そこで今回は、独身世帯やミドルエージのための、後悔しない生命保険の加入について考えてみます。
本当に生命保険は必要か
生命保険は、万一の場合の経済的な負担を補うのがその第一義の目的です。そうであれば、独身者や子供がいないもしくは既に成人してある程度の蓄えがある中高年世代にはさほど必要のない商品です。
いやいや、病気をしたときには医療保険が必要だろうという声が聞こえてきますが、ここで何度もお話しているように、まずは「いらないかも」という認識からスタートして欲しいのです。そして、生命保険がなかったらどれだけ困るのかを、実際に数字で計算してください。それと同時に、生命保険があるとどれだけ助かるのかも。
とにもかくにも、まずは世間に流されるのではなく、自分にとっての生命保険の必要性をしっかりと整理して欲しいのです。
目的にあった保険選びを
独身者や中高年の方でも、いつか来る日のために備えて、ある程度の終身保険は確保しておいて欲しいと私も思いますが、終身保険の解約返戻金を老後資金にも活用しようと考える場合は、商品選びや、保険の掛け方が重要です。ここ10年以内に老後資金として活用することを考えている人以外は、将来に向けての金利変動も当然考慮しなければなりません。であれば、金利変動が全く反映しない「無配当」の商品ではなく、少なくとも配当のある「有配当」の商品、できれば、金利の変動がそのまま保険金や解約返戻金に反映する仕組みになっている「積立利率変動型」の終身保険か、投資リスクを取っても良いならば、変額保険/終身型(変額年金ではない)などを選択することをお勧めします。
そしてもう一点、もし終身保険に老後の資金の準備の機能を持たせるとしたら、保険料の払込期間は短いものを選びましょう。例えば、40歳の独身女性が60歳まで保険料を支払う500万円の終身保険に加入すると、月払い保険料は1万4千円前後です。これで、もう少し保険料を支払える場合は、保険金額を倍の1,000万円にするのではなく、保険金額はそのままで、払込期間を短く50歳までにする方が賢明です。死亡保障がさほどいらないのに保険金額を増やすよりは、今後、より良い商品が出てきたときにも切り替えができ、運用効率も高い短い払込期間を選択すべきなのです。
死亡したときや病気したときだけでなく、生命保険は、老後資金の蓄えにも個人年金保険というような商品を通して利用されています。この場合は、純粋に貯蓄商品としての性能をしっかり吟味する必要があります。保険料として支払うことで自然にたまっていくという利点だけで保険加入を検討するのは、老後資金を考えるにしては感心しない選択です。よく「貯金は△、保険は□」といい、必要資金がすぐに準備できる保険の効用が紹介されていますが、個人年金保険は、□ではなく、△の商品で、しかも、貯蓄ならば元本割れしませんが、途中解約による元本割れもあり得る商品なのです。
50歳前後の方ですと、金利の高い頃の生命保険のイメージが残っており、「保険で貯蓄」が可能と考えがちですが、これだけ低金利が長く続いている状況では、新たに加入するのであれば、保険に対する考え方を修正しておく必要があります。
生命保険も金融商品です。別に特別な商品ではありません。であれば、金融商品としてしっかりとした評価をし、それに基づいて加入の可否や商品選択をすることは、特に保険に貯蓄性を求めたがる独身の方や中高年には、大切なことなのです。
保険はやっぱり分かりにくく、しかも高額な商品です。大切なお金を無駄にして後悔しないためにも、このコラムにお使いいただいたみなさんには、ぜひとも納得できる保険加入を心がけていって欲しいと切に願う次第です。
- 筆者プロフィール
- 藤井泰輔(ふじい・たいすけ)さん1954年、名古屋生まれ。一橋大学商学部卒。三井物産から生命保険会社を経て、今は総合保険代理店ファイナンシャルアソシエイツを経営するCFPのおやじ。著書「あなたの生命保険払いすぎ!」(かんき出版)「安心セカンドライフのマネープラン」(日本評論社)他。生命保険を初心者に分かりやすく解説するサイト 、「保険見直しドットインフォ」などを運営。
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