Sunday, April 24, 2011

22/04 菅首相の会見全文〈22日〉

2011年4月22日22時1分

 菅直人首相の22日の記者会見の全文は次の通り。

 【冒頭】

 「前回、大震災発生から1カ月目の記者会見を行った。それから約10日たち、この間に、さらに前進したこと、さらには、これからの方針、方向性について私のほうから国民のみなさんに説明をしたい。今後も、そういう形をとれればと思っている。まず、昨日、福島県を訪問した。その中で被災者の方に何人もお会いしたが、一番耳に残った言葉があった。それは、私のうちは今、アメリカよりも遠いんですよ。アメリカなら十数時間で行くことができるけれども、私のうちには何週間も場合によっては、何カ月も、かかっても帰れないかもしれない。なんとか早く帰れるようにして欲しい。その言葉が一番耳に残った言葉だった。何としてもこの原子力事故によって、家を離れなければならなくなっている皆さんが一日も早く自分のうちに戻れるように政府として全力を挙げなければならない。改めてそのことを強く感じた」

 「こうした中、昨日、警戒区域を設定し、本日は計画的避難区域と緊急時避難準備区域を設けた。この措置は、住民の皆さまの安全、健康を最も重視して決断した。内容については既に官房長官などから詳しく説明をしているが、特に警戒区域というのは、いわゆる原子力発電所から20キロ圏内において、基本的には避難をすべての人がしている。中には治安上、窃盗などがあるのではないかという心配もある。そういった中で今回、警戒区域という形で、法律的にその中には入れないという位置付けにした。それと同時に、中に住んでいる皆さんには、一時的に家に立ち寄ることができるような、そういう形をこれから順次、計画的に進めてまいりたい。着の身着のままで避難された方が、一時的にうちに戻って必要なものを取ってくることができるような、そういう対応をしてまいりたい」

 「福島第一原発事故の今後についてだが、既に17日に東電から今後の見通しについて工程表が提示されている。政府としては、この工程表を予定通り実現する、ステップ2は、ステップ1の3カ月に加えて、さらに3カ月から6カ月となっているが、できることなら、なるべく短い期間の間にそれを実現する、そうすれば、その中から、避難した皆さんに対してどういう形で戻ることが可能なのかを提示することが、ステップ2が終わった段階に立ち入れば、できるのではないかと考えている」

 「この間、復旧が次第に進んできている。仙台空港の再開、東北線の全線開通など、着実に前進している。さらに本日は、第1次補正予算の概算を閣議決定をした。来週、がれき処理など復旧のための補正予算を国会に提出し、連休中には成立できるよう努力をしたい。さらに、震災関連の法律を順次、国会に提出してまいりたい」

 「当面、仮設住宅の整備が大きな課題だ。各県で仮設住宅の建設を精力的に進めて頂いており、感謝をしている。政府も資材確保などに全力をあげており、自治体が場所を決めて提供できる場所を決めて頂いて、その中で、作業を急ぎたい。5月末までには3万戸を完成させたい。最終的には仮設住宅、あるいは借り上げ等含めて10万戸を避難される方に提供できるようにしていきたい」

 「また、こうした復旧が進む中で、復興の議論も本格化してきている。14日には復興構想会議の1回目が行われ、あすは2回目となる。6月末をめどに、この復興構想会議で復興の道筋、あり方について、提言をまとめて頂くようにお願いをしている。復興は、単に元に戻すという復旧ではなくて、すばらしい未来をつくるという復興であってほしい。そのことも多くの皆さんと共有している考えだと思っている」

 「この復興を考える上で、私はさらに今回の大震災、原発事故の危機が一つの危機ではなくて、危機の中の危機だ。このように位置付けしている。つまり、我が国は、この20年余り、経済的にも成長が低迷し、社会的にも自殺者がなかなか3万人を切らないといったような、多くの課題、社会的な、ある意味での危機を経験しつつあった。そうした中に、この大震災、原発事故という危機がまさに発生した。危機の中の危機の発生、このようにとらえて参りたい。そして、この二つの危機に対して、同時に、この危機を解決していくことが今、私たちに求められている。もっと言えば、この復興ということは大震災を契機に、多くの国民が、自分たちが何とかしなければという思いを強くして頂いている。その思いを本当に力にかえて、この復興をバネにして、もともとの危機を含めて、二つの危機を乗り越えていく。つまり日本再生が東日本の復興を支え、一方では、東日本の復興が、日本の再生のさきがけとなる。こういう形で推し進めて参りたい」

 「そして、そうした考え方において、マクロ経済面を含めた今後の日本再生の全体的方針を提示をするため、連休明けには、本日も朝行いました経済の見通しを立てる会議を通して全体の方向性もお示し、大きな方向性をお示しできるようにしたい。そして、こうした復興構想会議の努力やマクロ経済の見通しなどを踏まえて、いよいよ復興そのものを実施していく体制、仮称ではありますが、復興実施本部というものを検討しなければならない。この大きな復興には自由民主党や公明党など各党のご協力が不可欠だと考えている。この復興実施本部について、ぜひともこうした自民党、公明党はじめ各政党のご協力をお願いしてまいりたい」

 「そして、今回の大震災で亡くなられた皆さん、私はその皆さんが声なき願いを私たちに強く伝えて頂いているように思えてならない。それは、生き残った皆さんが、私たちが力を合わせて素晴らしい日本をつくってほしい、こういった願いだと思っている。私自身、この大震災の時に総理という立場にあった。一つの宿命だと受け止めており、こうした亡くなられた皆さんの、その願いを実現するために私にもてるすべての力を全身全霊を振り絞って、その実現に向けて頑張りたい。この気持ちを改めて強くいたしている」

 「こうした中にあっても、各国からの我が国に対する支援、あるいは激励は続いている。先日はクリントン・アメリカ国務長官がわざわざお見舞いと表敬に立ち寄っていただいた。昨日はオーストラリアのギラード首相が来られ、明日、オーストラリアの救援隊が救援活動を行った地域に自ら足を運んで頂く予定になっている。本日は経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長とも意見交換をした。こういう皆さんがわざわざこの時期、日本にかけつけて頂いて激励を頂く。そして日本は必ず再生する、そういう強いメッセージを世界に発信して頂く。さらには日本でいろいろな地域を視察をすることを通して、日本が決してある部分を除いては安心して外国人も来ても大丈夫なんだ、いろんなものを食べても大丈夫なんだ、そういうことを発信して頂いていると思っており、特にそうした発信が我が国を助ける本当に大きな力になる。あらためて感謝を申し上げたい。いずれにしても、そういった皆さんの期待にこたえて、原発事故も含め、開かれた形で国際社会と協働して、復興と再生を進めてまいりたい」

 「前回の会見において、過度ないろいろな催し物の自粛をやめて活気を取り戻すことが被災地の支援につながるということを申し上げた。しかし、まだ一部には自粛ムードが続いているようだ。そんな中で、私も視察に訪問した陸前高田市では数百人の皆さんが集まる花見会が催されたと聞いている。がれきのなかから見つけ出した太鼓が演奏されて、被災者を元気づけたと聞いている。こうした集い、お祭りは古くからの地域のきずなを強め、活気をもたらすうえで大変大事な行事であると思う。被災地では今後、仙台の七夕祭り、盛岡さんさ踊り、相馬野馬追など、こうした中ではあるけれども、いや、こうした中であるからこそ、今年も開催するという地域がどんどん出てきている。その勇気に敬意を表し、日本全国でこれらのお祭りを応援してまいりたい」

 「多くの皆さんが応援の気持ちをもって接している中で、一部に思いやりに欠けるような対応があるという指摘もあるが、そうしたことがないようにお互いに気を付けてまいりたいということも国民の皆さんにお願いしておきたい。来週からは連休で、今年は観光に出かけるのは控えようと言われている方も多いかもしれない。しかし、できることなら、先ほど申し上げたように、この東日本、東北におけるいろいろな催し物に参加をするために出かける。あるいは、そうした地域で採れた野菜や、あるいはお酒を買い、いろいろな民芸品を買って、それらの地域を元気づける。中にはボランティアとして応援に行こうという方も多いのではないかと思う。どうかこのゴールデンウイークが、そうした被災地の皆さんを元気づける、そういうゴールデンウイークになるよう、それぞれの立場で考え、行動して頂けることを期待し、私の話にさせて頂きます」

 【復興実施本部】

 ――復興実施本部の立ち上げと野党側の参画を呼びかけたが、復興実施本部はどのような権利や責任を有する会議体を考えているのか。野党への呼びかけは現在、国民新党の亀井代表が行っているが、他党の代表がなぜこういう大事な呼びかけを行っているのか。亀井代表は、総理が地位に恋々としないと伝えていると言っているが、総理は復興にメドがたったら退陣も辞さない決意なのか。亀井さんとどのようは話をしているのか。

 「まず実施本部のあり方については、過去のいろいろな例などは調べている。そのあり方そのものも含め、できることなら野党の皆さんとも協議をして形作ってまいりたい、このように思っている。呼びかけについては、連立を組んでいる国民新党の亀井代表の方から、自分もそうした自由民主党や公明党など各党の皆さんが参加する形が望ましいと思うけれども、菅はどう思うか、ということを聞かれ、それはそういう形がとれるものなら大変ありがたい。その方向に向けて、亀井国民新党代表がご努力頂けることは大変ありがたい、と申し上げているところであり、そういうことを受けて、亀井代表がいろいろと努力をして頂いている。このように理解をいたしている。そして、この大震災と原子力事故のことは、先ほども申し上げましたように、私がその時に総理という立場にあるというのは、ある意味で私にとっては宿命だと、このように受け止めている。その意味で、この事態に対して何としても復旧、復興、そして二つの危機を乗り越えていく道筋を作り出していきたい。そうした道筋が見えてくれば、政治家としては、まさに本望だと、このように考えている」

 【組織の乱立】

 ――原発担当大臣を置く考えはあるか。原発や震災、復興の会議や本部が乱立しているが、整理統合する考えはないか。

 「この大震災、加えて原子力事故ということで、それぞれ政務三役、これまでの平常時というか、大震災発生以前の仕事に加え、大変大きな仕事を抱えて、まさに不眠不休でそれぞれ頑張って頂いている。そういった意味で、現在の大臣や政務官、副大臣、補佐官というものは法律で定員が決まっているので、できることならもう少しその定員を増やさせて頂いて、それぞれの問題にさらに有能な方にそうした立場で加わって頂きたいと考えている。その意味で、内閣法改正について、自民党や公明党各党の皆さんにも、この間、幹事長などを通して話をしている。まだ実現していないが、ぜひともご理解頂ければと思っている。また、たくさんの本部があって色々わかりにくいのではないかという指摘がある。基本的には二正面作戦をやらざるを得ない状況にあるということについてはぜひまず理解頂きたい。つまりは地震津波という自然災害、これに対しては緊急災害対策本部、法律に基づいて義務づけられたものを設置した。一方で原子力の重大事故に対しても、原子力災害特別措置法によって、法律で義務づけられた本部を設けた。それぞれの本部、一部に被災者支援などでダブる部分もあるが、例えば補償の問題や色々な避難の問題のあり方については、それぞれ違った制度や違った意味を持っているので、その意味で二つの大きな本部を設け、それぞれのもとに例えば避難のため、補償のためそれぞれのある意味での実行部隊を設けた。その名称が本部という形で重なっている関係もあって、あるいは皆さん方に複雑に見えているかもしれないが、基本は二つの本部の下の色々な課題を取り組むチームというかプロジェクトチームのようなものとこのように理解頂ければ分かりやすいと思う。それに加えて、党としての色々な活動もあるので、その党の本部は、内閣の本部とは性格を異にしている。しかしいずれにしても、かなり多岐にわたっているので、また時期によっては状況が変わってくるので、もう少し整理ができないかということで現在、官房長官のところで整理をする方向で調整している」

 【復興財源と消費税】

 ――復興財源を増税で賄う考えはあるか。とりわけ消費税引き上げを考えているか。

 「まず、第1次補正予算については、いわゆる国債ではなくて、従来の色々な支出項目を振り替えたり、そういう形で、概算の提案を致している。その次の本格的な復興のための第2次補正は、相当の規模になるであろうと、これは大方の方がそう見ているし、私もそう見ている。その場合に、その財源をどういう形で調達するのか、それは時間的な問題と内容の問題とがある。まずはやはり復興作業を進める上で、財源がないから作業が始められないといったことは決して望ましくない。そういった意味では、必要な財源は一時的には国債等の活用も含めて、そうしたものに充てていくということが必要になる。その場合に、そうした国債等について、どういう財源でいつ頃までに償還をするのか、そういうことが大きな議論として存在していることは私も承知している。こういった問題についても復興構想会議でも色々と既に意見が出ているようなので、これからの議論に待ちたい。この場合には、将来に対する色々な見通し、あるいはマーケットがどのように日本の国債市場を見ているか、そういったことも含めながら、しっかりとした議論をして参りたい」

 【世界へのメッセージ】

 ――世界は放射能汚染を心配している。世界へメッセージを発信してもらえないか。

 「この間、私も一つは色々な支援に対するお礼の意味を込めた広告を各国の新聞などに掲載をお願いした。また、私の書いた文章を各国の新聞に寄稿し、かなりの新聞等がそれを載せてくれた。その中で日本というこの国が、例えば食べ物などにおいても危ないものは市場には出していない。そういったことを含めて安全性について理解を求める、そういったことも行っている。これからも更にそうした外国から来て頂くことによる発信も大変ありがたいが、もちろん我が国自身の色々な機会を通しての発信を強く進めて参りたい」

 【警戒区域】

 ――警戒区域設定の発表から実施まで短かったこともあり、現地でトラブルが生じている。家畜やペットの避難についても方針がないまま実施されたことで野党から批判の声も出ているが、そこまで緊急性あるという認識をもって実施したのか。また、場合によっては強制手段も致し方ないとの認識か。

 「ご承知のことかと思うが、福島第一原発から20キロ範囲についてはかなり早い段階で避難区域という形で指定した。基本的にはその中にいて頂くと健康上の問題が生じる可能性があるので、避難をして頂きたいという要請だ。今回の警戒区域は、法律に基づくという意味で、確かに法律上の罰則規定といったものがあるが、基本的な考え方は、この範囲は住民の健康や安全を考えると避難をして頂いていなければならないという考え方では特に変わったわけではない。実際には、この間は、自分の家に帰っていた方もある程度いたが、基本的には説得をしていきたい。法律があるからすぐに強硬な規定を適用して強制力を行使するということでなくて、基本的には説得をするという形で対応したい。きょう公安委員長とのほうともそういう話をした。それに加えて、その地域に住んでいる皆さんが一時的に戻って、必要なものを取り出してくることができるような態勢を今から順次進めていくので、そういう形で理解頂けるのではないかと思っている。確かに、家畜とかペットとかの問題もあり。本当にご不便をかけ、あるいはご迷惑をかけるが、自治体ともこの間かなり丁寧に話をしてきたので、今申し上げたようなことも理解頂ければ、多くの住民にとってはそうした形の方が安心できる形ということで理解頂けるものと思っている」

 【東電の工程表】

 ――東京電力の工程表の実現が厳しくなった時、国民の衝撃は大きい。そうならないための国の対応の準備はできているか。

 「17日に東電が工程表を発表した。ステップ1は3カ月がメドで、ステップ2は6カ月ないし9カ月となっている。国の立場としては東電が自ら作成し提示した工程表が実現できるように、国として協力できること、やれること、全力を挙げて協力し、ともにやっていくことがまず何よりも重要だ。いろいろな課題があるので、いろいろなことが進んだ後にまた新たな問題が生じてきているのがこの1か月余りなので、どのような展開になるかをすべて私が予測することは残念ながら不可能だ。しかし、東電が出した工程表は、国も含めて取り組めば十分実現可能なものだと考えている。さらに言えば、想定されるあらゆる事象に対しても、あらかじめそういう事象が生じた場合にどうすべきか、こういったことについてもいろいろ同時並行的に検証なり検討をしている。そういうやり方で、何とか工程表の中で、物事が進むように全力を挙げるというのが政府の立場だ」

 【2次補正と国会会期】

 ――2次補正だが、復興構想会議が6月末に提言を取りまとめるということで、提言を待って編成するのか。その際、国会は閉じるのか。

 「復興構想会議には6月末をメドに考え方をまとめて頂きたいということはお願いしてある。そのことと、それを踏まえて、どのような形でどのような規模の第2次補正を組むかということは、やはりその内容などを含めて、その時点あるいはそれに至る過程の中で考えるべきことだ。今の段階で、そのメドが6月だから国会をどうするということまではまだ考えていないというか、まだその段階ではない。まずはこの国会で1次補正と関連する法案と、もともと提案しているいろいろな従来の課題を国会で議論し成立させることがまず今の課題であって、その後のことにつていままだ申し上げる段階ではない」

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