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Tuesday, July 12, 2011

12/07 よみうり寸評

7月12日付 

 〈原発の安全性新基準に関する政府の統一見解〉などといえば、もっともらしいが、何のことはない◆菅首相と海江田経産相の閣内不一致を取り繕うためのものだ。新たな安全評価を2段階で行う。1次評価を設けて経産相の、2次評価で首相の顔を立てる◆が、安全性確認のストレステスト(耐性検査)は1次、2次の時期も内容も定かでない。首相が唐突にテストを持ち出し、経産相のはしごを外して始まった閣内不一致だ。場当たり指示のほころびを繕う統一見解もまた場当たり的でしかないようだ◆九州電力玄海原発などの再稼働は1次で判断するというが、見通しは不透明。地元自治体の不信感修復は難しく菅政権はいよいよ空疎、迷走の度を強めている◆首相の行動は対案なき「脱原発」に傾いても見え「疑似市民運動の野望家らしい振る舞い」「場当たり政治家」(西岡参院議長)と厳しい批判が一層強まった◆リーダーが思いつきで場当たり的な指示を連発すれば、部下は疲れ果て周囲の迷惑は募るばかりだ。
(2011年7月12日13時55分  読売新聞)

Monday, July 11, 2011

11/07 よみうり寸評

7月11日付 

 〈帰る日の知れざる越後の避難所に口ずさむなり相馬流れ山 三条市 矢田園〉――先日の読売歌壇の一首◆「原発の事故で異郷にその歌を口ずさむ哀切の思い」と選評にある。その歌「相馬流れ山」は7月下旬、福島県南相馬市の「野馬追」の夜に歌われる民謡◆きょう7・11。東日本大震災発生の3・11から4か月になる。6月30日現在、避難者は全国47都道府県の1146市区町村で9万9236人に上り、うち約2万4000人が依然、学校などの避難所で生活している。厳寒から酷暑へと季節は移った◆わが家へいつ帰るとも知れぬ不安な思いは察するに余りある。エアコンもなく、蒸し暑い体育館などの避難所。腐臭、ハエなどに悩まされる所もある◆そんな折、女子サッカーW杯、なでしこジャパンの健闘には元気づけられる。3連覇を狙う強豪ドイツを延長戦で破り、初のベスト4進出はあっぱれ◆決勝点をあげたFW丸山桂里奈は05~09年の間、東京電力に所属していて、被災地福島にゆかりの深い選手だ。
(2011年7月11日13時55分  読売新聞)

Saturday, July 9, 2011

09/07 よみうり寸評

7月9日付 

 本場所の初日、日本相撲協会の理事長は横綱、大関らを従えて土俵に立ち、ファンにあいさつをするのが慣例だ◆野球賭博事件で大揺れだった昨年の名古屋場所初日。謹慎中だった当時の武蔵川理事長に代わり、村山弘義理事長代行はこう約束した。「再生に向け、改革の場所とするために確固たる決意を持って取り組みたい」◆1年前のあいさつとは思えない。今の角界が置かれた状況に、ぴたりと当てはまる。あす初日を迎える今年の名古屋場所で、放駒理事長がこれをそのまま“借用”することもできそうだ◆八百長問題で、25人の力士・親方が角界を追われた。春場所は中止となり、夏場所は無料公開の技量審査場所に姿を変えた。1月の初場所以来の本場所となる◆大関魁皇は、あと1勝で歴代トップの千代の富士の通算勝ち星に並ぶ。横綱白鵬には史上初の8場所連続優勝がかかる。関脇琴奨菊は大関に手が届くのか◆楽しみが多い場所で、充実した土俵を期待する。「再生」へ、仕切り直しは、もう許されない。
(2011年7月9日19時10分  読売新聞)

Friday, July 8, 2011

08/07 よみうり寸評

7月8日付 

 「政府のやり方は人を小ばかにしている。九州電力のやらせメールは言語道断」と佐賀県玄海町の岸本英雄町長。不信と憤慨は当然だ◆国のエネルギー政策の両輪、政府と電力会社がそろって原発立地の自治体、ひいては広く国民に不信をばらまいてどうする◆岸本町長は政府のお墨付きを信じ、玄海原発の再稼働をいったんは了承した。が、撤回に転じたのは無理もない。了承後、唐突にストレステスト(耐性検査)の話。順序が違う。首相は思いつきでものを言い過ぎる。「小ばかにして」と思う◆そんなところへ、やらせメール事件だ。九電には了承の際「ヒューマンエラーがないよう強く要請したのに」。やらせはエラー以前の問題。卑しさが情けない◆「九電との信頼関係に亀裂が入った」と町長。県民への説明会の公正を疑わせては再稼働賛成派も反発する。原発の安全神話の成立にも不信を生む逆効果の愚行◆九電社長の謝罪会見も差し入れられたメモで話が変わるお粗末。最高責任者らしからぬ会見だった。
(2011年7月8日13時44分  読売新聞)

Thursday, July 7, 2011

07/07 よみうり寸評

7月7日付 

 またまた菅首相の〈場当たり〉的な指示が出た。全国各地の原発の再稼働についてストレステスト(耐性検査)を実施するという◆安全性確保のためのストレステスト自体は実施に異論はない。が、エネルギー政策の根幹にかかわる決断が、こうも行き当たりばったりでいいのだろうか◆九州電力の玄海原発(佐賀県)は先月、海江田経産相が運転再開について地元自治体に「安全」のお墨付きを出したばかり。任されていたはずの経産相は突然はしごを外されたかたちだ◆佐賀県の古川知事も当惑。いったんは再稼働了承を九電に伝えた地元玄海町の岸本町長は了承を撤回した。途中までは〈丸投げ〉、最終段階では〈場当たり〉指示。これでは周囲も迷惑千万だ◆経産相は「より安心感を得るためのテスト」と位置づけるが、首相は「まずルールを明確にする」と再稼働はテスト後に判断する意向。閣内の亀裂が露呈した◆こんな経緯を見ていると、いつ崩れるのか、首相と内閣のストレステストを見ているような気もする。
(2011年7月7日14時10分  読売新聞)

Wednesday, July 6, 2011

06/07 よみうり寸評

7月6日付 

 「被災者には人一倍寄り添っているつもりだった」と言うが、それであんな放言が出るものだろうか◆「知恵を出さないやつは助けない」とは何という寄り添い方か。被災者の代表でもある知事に向かって「ちゃんとやれ」は傲慢無礼。そんな人物に寄り添われたい被災者がいるだろうか◆そのことに気づいたら、復興担当大臣はやっていられない。「九州の人間ですけん」「B型だから」と言うが、それは荒い言葉や短絡思考の弁解にはならない。放言というよりは暴言、上から目線の人物は辞任するしかなかった◆その松本龍氏の辞任を菅首相は慰留した。首相も枝野官房長官も、辞任申し出が寝耳に水だったという。復興相の問題言動の受け止め方が甘すぎる◆「首相は一分でも一秒でも早く辞めて」と渡部恒三民主党最高顧問、「本当に情けない内閣だ。党として支える価値があるのか」と安住国対委員長◆党内にしてこの激しい批判。もはや政権は崩壊同然の状態だ。前復興相に学ぶべきは〈辞任〉の一点だろう。
(2011年7月6日13時39分  読売新聞)

Tuesday, July 5, 2011

05/07 よみうり寸評

7月5日付 

 「あの2人と同時代にやることが、どれだけタフかわかるだろ」──テニスのウィンブルドン選手権・男子シングルスで初優勝したノバク・ジョコビッチ(セルビア)の弁◆無論、2人とはナダル(スペイン)とフェデラー(スイス)。8年もの間、ウィンブルドンの優勝は2人で分けてきた。男子シングルスの世界ランク1位も2人で7年5か月占め続けた◆この2強時代の長く厚かった壁を〈第三の男〉だったジョコビッチがついに打ち破った。セルビア人初の快挙に喝采◆今大会は女子シングルスでも同様に新チャンピオンが生まれた。ペトラ・クビトバ(チェコ)。7年ぶりの優勝を狙うシャラポワ(ロシア)を退けた◆女子も男子同様、2人の厚い壁があった。米国のウィリアムズ姉妹。今大会までの12年間でウィンブルドン女子シングルスの勝者は2度にわたる4年連続を含め9回がこの姉妹だった◆1877年に始まった世界最古のテニス・トーナメント。幾多くり返された覇者交代の歴史を思うと感慨も深い。
(2011年7月5日13時47分  読売新聞)

Monday, July 4, 2011

04/07 よみうり寸評

7月4日付 

 〈長幼の序〉は心得るべき徳目ではあろうが、大臣と知事の関係で、とりわけ仕事で会談する際などに持ち出す話ではあるまい◆松本復興相の3日の言動には唖然あぜんとした。宮城県庁を訪れた際、村井知事が会談の部屋へ後から入ってきたことをなじった話だ。「お客さんが来る時は自分が入ってから呼べ」と偉そうに述べ、長幼の序を持ち出した◆「自衛隊ならちゃんとやるぞ」とも言った。同県の要望には「県でコンセンサスを得ろよ。そうしないと我々は何も知らんぞ」と極めて高飛車。人間の地が出たと見る◆これに先立ち岩手県庁では、達増知事と復興について会談し「知恵を出したところは助けるが、知恵を出さないやつは助けない」と述べた◆「九州の人間だから(東北の)何市がどこの県とか分からん」と冗談めかした発言もあった。被災地で、しかも復興大臣のこんな発言が冗談で通るとでも思うのだろうか◆復興の先行きが心配だ。長幼の序にも半可通のようだが、〈傲慢ごうまん無礼〉の不徳は知らないらしい。
(2011年7月4日13時49分  読売新聞)

Saturday, July 2, 2011

02/07 よみうり寸評 - 節電の夏を知恵を絞って乗り切ろう


7月2日付

節電のため照明を消したオフィスの写真が昨日の小紙朝刊1面(東京本社版)に載っていた。薄暗い。社員の手元をスタンドのあかりが照らす様子は「夜間飛行の機内のようだ」と記事にある◆電力不足に対応するため政府は照明節約に加えエアコンも設定室内温度を高めにするよう呼びかけている。オフィスだけでなく家庭での取り組みも大切という◆この夏は暑い「夜間飛行」になる。ただ耐えて過ごすしかないのか。東京都荒川区は「街なか避暑地」を考え出した◆区施設のロビー、集会室にエアコンを利かせ区民に「避暑地」として開放する。お茶を出したりもする。その間、家のエアコンは止まるので区全体では節電になる。エアコン節約による区民の熱中症も減ると期待する◆福井県も、暑い日中こそ家のエアコンを切って映画館や買い物へ行こうと呼びかけている。「昼涼み」だ。協賛店の割引サービスもある◆大幅節電に成功した家庭に特産品などを贈る自治体もある。節電の夏を知恵を絞って乗り切ろう。
(2011年7月2日14時09分  読売新聞)

02/07 よみうり寸評 - 節電の夏を知恵を絞って乗り切ろう


7月2日付

 節電のため照明を消したオフィスの写真が昨日の小紙朝刊1面(東京本社版)に載っていた。薄暗い。社員の手元をスタンドのあかりが照らす様子は「夜間飛行の機内のようだ」と記事にある◆電力不足に対応するため政府は照明節約に加えエアコンも設定室内温度を高めにするよう呼びかけている。オフィスだけでなく家庭での取り組みも大切という◆この夏は暑い「夜間飛行」になる。ただ耐えて過ごすしかないのか。東京都荒川区は「街なか避暑地」を考え出した◆区施設のロビー、集会室にエアコンを利かせ区民に「避暑地」として開放する。お茶を出したりもする。その間、家のエアコンは止まるので区全体では節電になる。エアコン節約による区民の熱中症も減ると期待する◆福井県も、暑い日中こそ家のエアコンを切って映画館や買い物へ行こうと呼びかけている。「昼涼み」だ。協賛店の割引サービスもある◆大幅節電に成功した家庭に特産品などを贈る自治体もある。節電の夏を知恵を絞って乗り切ろう。
(2011年7月2日14時09分  読売新聞)

Friday, July 1, 2011

01/07 よみうり寸評 - 電力各社の株主総会では経営批判や脱原発を求める声が例年以上に活発だった


7月1日付

〈……かつてない事態の発生だ。かくてこの国の『戦後』をずっと支えていた“何か”が音をたてて崩れ落ちた〉――復興構想会議がまとめた「復興への提言―悲惨のなかの希望―」前文の一節◆政府と東京電力はこのことを常に胸に刻んでおいてもらいたい。東京電力・福島第一原発の原子炉建屋の無残な姿は“何か”が崩れ落ちた象徴にも見える◆電力各社の株主総会では経営批判や脱原発を求める声が例年以上に活発だった。株主による脱原発提案はいずれも否決されたが、福島県の自治体の中には提案に賛成の動きも出た◆無論、ただちに脱原発とはいくまいが、銀行など大株主の委任状を盾にしたニベもない否決では提案した株主ならずとも不信が募る◆“何か”が音をたてて崩れ落ちたことを十分認識していないようにも見える。広く国民に丁寧な説明が必要でそれは政府も同じこと◆菅首相は、浜岡原発の停止要請には前面に出て見せたが、玄海など他の原発の再稼働は海江田経産相まかせで、無責任に見える。
(2011年7月1日13時44分  読売新聞)

Thursday, June 30, 2011

30/06 よみうり寸評 - 思えば、これが〈家族合わせ〉の時代と重なる


6月30日付

 昔、子供の遊びに〈家族合わせ〉というのがあった。かるた、トランプの類の札遊びで明治から昭和前期まで全国で流行した◆戦後は間もなくすたれたから、今や、知る人も少ない。決まった構成はないが、1家族5、6人ほどで、父母、兄弟姉妹などが、別々の札に描かれていた◆家族は何組かあり、職業別に家長の氏名がある。銀行員なら石部金吉、警官なら民尾守など。家族ごとにその一家全員をそろえたものが勝ちのゲームだった。これが遠い昔の遊びになったのは無理もない◆総務省がきのう発表した2010年国勢調査の抽出速報集計によると一人暮らし世帯の割合が初めて3割を超え、家族類型別のトップになった◆何と一人暮らし世帯が「夫婦と子供」の世帯を上回ってしまった。未婚者や高齢者の増加が一人暮らしの数を押し上げたらしい。少子高齢化はいよいよ深刻な様相だ◆1920~55年の35年間、日本の家族規模は平均5人強でほぼ横ばいだった。思えば、これが〈家族合わせ〉の時代と重なる。
(2011年6月30日13時41分  読売新聞)

Wednesday, June 29, 2011

29/06 よみうり寸評 - 〈身体髪膚これを父母に受く、あえて毀 き 傷 しょう せざるは孝の始めなり〉


6月29日付

 〈身体髪膚これを父母に受く、あえてしょうせざるは孝の始めなり〉――中国の古典・孝経の教えだ◆ルールに反した腎臓移植の事件に、古く遠い教えを思い浮かべた。父母にもらった大切な臓器を軽々に売買したりするなと言いたい。無論、正当な医療のためのメスなら何の支障もない◆が、生体腎移植を巡り警視庁が捜査中の臓器売買仲介事件のような話は別になる。しかも今回の事件は腎臓を求めた本人が病んだ医師で、仲介、提供者に暴力団組員や元組員が登場、提供者には生活保護受給中の背景もあった◆1000万円の報酬に上乗せを要求されるトラブルなどの末、実際の移植は、別の病院で新たな提供者から行われた。結果、2度も養子縁組をしている◆施術した病院は倫理委員会を2度開いたが、売買や養子縁組に疑いを持たなかったという。???な話。今後の捜査の焦点になろう。臓器を売買するあさましさ、おぞましさが悲しい◆〈身体髪膚〉まで持ち出して、医師に医の倫理を問うような事態が情けない。
(2011年6月29日13時51分  読売新聞)

Tuesday, June 28, 2011

28/06 よみうり寸評 - 〈灯火 ともしび のまさに消えんと欲する時、光を増すに異ならず〉


6月28日付

 〈灯火ともしびのまさに消えんと欲する時、光を増すに異ならず〉――自ら退陣を表明しながら、なりふり構わぬ人事を断行した菅首相に、こんな言葉を思い浮かべる◆灯火が消える寸前に明るさを増すのは最後に一時、力を盛り返す様子に例えられるからだ。が、首相のハッスルは盛り返すというより迷走にしか見えない◆首相は第2次補正、特例公債、再生可能エネルギーの3案件成立を退陣のメドとしたが、野党ばかりか民主党執行部からも「こんなことでは……」と激しい批判が噴出する始末。これでは国会運営の先行きはおぼつかない◆とりわけ自民党参院議員を政務官ポストで一本釣りした手法には猛反発があり、「責任は持てない」と安住民主党国対委員長◆「積み上げてきたものが、すべてパーになりかねない」と仙谷代表代行。首相と周辺の亀裂は深刻だが、国会が動かなければ、3案件成立をメドとする首相退陣は先に延びるという妙な関係◆政府・与党の人物相関図に〈信〉の関係が見えないのはまことに不幸だ。
(2011年6月28日13時40分  読売新聞)

Monday, June 27, 2011

27/06 よみうり寸評 - 芭蕉の言う「千歳の記念」は「世界の記念」になった


6月27日付

 〈五月雨のふりのこしてや光堂〉――岩手県平泉町の中尊寺金色堂を芭蕉はこう詠んだ。元禄2年(1689年)のことだった◆すべてのものは雨で朽ちるが、ここだけは降り残したように長い風雪に耐え、光り輝いている。その美しさに感嘆した句だ◆「奥の細道」には「光堂は(藤原)三代のひつぎを納め……四面新たに囲み、いらかを覆いて風雨をしのぐ。千歳せんざい記念かたみとはなれり」と記した。それからさらに322年を経たきのう、中尊寺や毛越寺など「平泉の文化遺産」が世界文化遺産に登録が決まった◆平安時代に奥州藤原氏が築いた寺院や庭園などの遺跡群は「極楽浄土信仰に基づいて現世に浄土空間を表現した」と評価された◆芭蕉の言う「千歳の記念」は「世界の記念」になった。日本の世界文化遺産は12件目、東北では初。自然遺産を合わせると24日に決まった小笠原諸島を含め16件◆東日本大震災の3・11以来、多難な日々の東北を力づけるような世界文化遺産の登録だ。平泉だけでなく広く東北復興のバネにしたい。
(2011年6月27日13時52分  読売新聞)

Saturday, June 25, 2011

25/06 よみうり寸評 - 地道な取り組みが、「想定外」の被害軽減につながることを期待したい


6月25日付

 〈大仏の御腹のなかへは御父さまもまだはいった事がない 御前方はいい事をした〉。文豪・夏目漱石は1912年、鎌倉で夏休みを過ごす長女に東京からそんな手紙を送った◆胎内拝観ができることで知られる鎌倉・高徳院の大仏は台座を含めた高さが13メートル超。かつてその大仏を覆って立っていた大仏殿の高さは、礎石跡の調査から40メートル近くもあったと推測される◆室町時代などに記されたいくつかの文献が、大仏殿の倒壊に触れている。15世紀末、大地震による津波で押し流されたという趣旨の記述もある◆東日本大震災を受けて、国の中央防災会議の専門調査会が、あらゆる学術的な情報を検討して津波被害を想定するよう求める中間報告骨子をまとめた◆東北地方では、平安時代の貞観じょうがん地震の大津波に関する研究成果がありながら、自治体の防災対策に十分生かされていなかった◆古い地層の痕跡や文献の記録から、災害の歴史をひもとく。地道な取り組みが、「想定外」の被害軽減につながることを期待したい。
(2011年6月25日13時43分  読売新聞)

Friday, June 24, 2011

24/06 よみうり寸評 - 「信」はにんべん、つまり人に言だ。人の言葉は「まこと」でなければならない


6月24日付

 「好胤のことば」という本が出た。初版第1刷6月22日発行。薬師寺の元管主、高田好胤さんは平成10年のこの日に亡くなっている◆没後13年で世に出たこの一冊は、娘の高田都耶子さんが遺品の中から見つけた古い録音テープを再生、学生社から刊行した◆「話の散歩道」という大阪朝日放送のラジオ番組で語った法話。昭和44年から2年間、毎日一話3分で放送されたものから82回分が選ばれた。好胤さんが「心の種まき」と言っていた法話を懐かしい思いで読んだ。そのうちの一話〈人の言葉と書いて「信」〉を紹介しよう◆「漢字をじっと見ているといろいろな教えが含まれています」ということで、「法」と「信」の二つの漢字について語っている◆「法」はさんずいに去ると書く。つまり水が去るのが法だ。揚子江や黄河のような大河が氾濫しないように、水を去らしめるのが、天下を治める法ということだ◆「信」はにんべん、つまり人に言だ。人の言葉は「まこと」でなければならない。ペテン師に聞かせたい。
(2011年6月24日14時22分  読売新聞)

Thursday, June 23, 2011

23/06 よみうり寸評 - 信を失った首相による延長は不毛の70日にならないか


6月23日付

 「この1週間、何をしてきたんだろう」と民主党の岡田幹事長。菅首相と自民、公明両党の間をむなしく走ったことへの自嘲の弁だ◆ようやく決まった国会の会期延長の話。〈延長幅50日、第3次補正は「新首相の下で」〉で一度はまとまりかけた3党合意が幻に。50日は70日に、「新首相の下で」は「新体制で」になった◆菅首相が強く抵抗したからだ。「新首相」では退陣が明確だが、「新体制」ならあいまいでなお粘れると首相は踏んだ。退陣時期に言質を与えない◆いわゆる玉虫色が狙いで延命策が見え見え。これでは自民、公明両党にしてもその手には乗れない。「新体制で」を玉虫色と言えば、美しい本来の玉虫色が怒る◆延命のための露骨なペテン色だ。もともと今回の首相退陣をめぐる混乱は不信任案否決の際のペテン(鳩山前首相の言)に始まっている。そこへまたもペテンまがい、玉虫色で延命策は頂けない◆非常時の会期延長は当然でも、信を失った首相による延長は不毛の70日にならないか。心配だ。
(2011年6月23日14時05分  読売新聞)

Wednesday, June 22, 2011

22/06 よみうり寸評 - 震災発生からすでに百箇日、卒哭 そっこく 忌も過ぎたが、涙の話題の尽きることがない


6月22日付

 朝のNHK・連続テレビ小説「おひさま」には泣かされる。昭和19年、20年の戦争末期の銃後の暮らしに思わず涙腺が緩むのだ◆けさは、東京大空襲を信州・安曇野で心配する人々の話。ヒロイン・陽子先生の東京の祖母は無事だったが、担任の児童で、妹と二人で疎開しているけなげな杏子ちゃんは両親を失った◆陽子先生の夫と二人の兄は出征中。夫とは結婚式から翌朝まで一日暮らしただけだ。苦境の数々に涙するのだが、それは、悲しみと不条理が3・11以後のそれと重なるから余計そうなのかも知れない◆こちらも数々の記事に何度も涙した。震災発生からすでに百箇日、卒哭そっこく忌も過ぎたが、涙の話題の尽きることがない◆あの日、防潮堤の水門閉鎖や住民の避難誘導に活躍中、多くの消防団員が大津波にさらわれて死亡、行方不明になった。無論いずれも公務中のこと◆だが遺族に支払われる消防団員福祉共済の弔慰金が不足で規定の4割しか支給できない。涙とともに不条理も尽きない。政府の手厚い支援を望む。
(2011年6月22日13時49分  読売新聞)

Tuesday, June 21, 2011

21/06 よみうり寸評


6月21日付

 大震災発生の3・11、東京で多数の帰宅困難者が出た際、JR東日本の対応は極めて問題だった◆駅舎のシャッターを下ろして乗客を寒空に閉め出したり、早々と終日運転中止を決めたり、私鉄や地下鉄のがんばりと比べてもどうかと思える対応だった◆きのう、JR東日本の清野智社長が石原都知事に謝罪した。都知事のJR批判と抗議は「その通りだ」と思う。あの日は腹立たしく思いながらも三陸の大津波、福島原発の惨状を思い、自分の苦情は抑えていた人も少なくなかろう◆JRは線路内立ち入りなど構内の危険を避けたというが、非情な対応だった。対照的にあの日、都心で帰宅の足を失い、大和市まで徒歩で帰ろうとした友人S君の話を思う◆麹町から7時間歩き神奈川県に入った所で運転再開した田園都市線に乗れたのだが、途中、三軒茶屋付近で小さなイタリア料理店の夫婦が徒歩の帰宅者たちに紙コップのスープを無料で振る舞っていた◆公共の足・JRの冷たい対応とは対照的な温かい思いやりだった。
(2011年6月21日13時39分  読売新聞)