Saturday, April 23, 2011

21/04 よみうり寸評 - Donald Keene 私と20世紀のクロニクル

4月21日付 

 「私の生活は、あまりにも日本と離れ難く結びついていて、その絆を断つことなど思いもよらない」◆ドナルド・キーン氏(88)はこう書いた。「日本はいつだって私が行き着く最後の港なのだ」と続く。5年前、土曜日の本紙朝刊に1年間連載した〈私と20世紀のクロニクル〉が〈ドナルド・キーン自伝〉と改題、この2月、中公文庫の1冊になった◆そのキーン氏が日本国籍を取得し日本に永住すると報じられた。東日本大震災の被災者そして日本へ連帯の強い意思表示だろう。「日本が最後の港」と書いたとおりだ◆震災と原発事故の始末の悪い風評が海外にも広がっている折だけにうれしい。対照的に外国人留学生の「日本離れ」はさびしい限りだ◆帰国を早めたり、訪日を取りやめるなどした留学生が71大学で4330人にも上る。国内の風評被害が止まらず、原発事故の収束への作業がもたついたりすると海外にも響く◆日本文学研究で文化勲章も受章したキーン氏に続く世界と日本の絆をもっと強靱きょうじんにしたい。

(2011年4月21日13時56分 読売新聞)

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