Saturday, April 23, 2011

19/04 よみうり寸評

4月19日付 

 〈震災歌集〉――あの3月11日の夜から長谷川櫂さんに荒々しいリズムで短歌が次々に湧きあがってきた◆これは東日本大震災から12日間の氏の短歌による記憶と記録。中央公論新社から刊行される。俳人の氏が、なぜ俳句ではなく短歌だったのかは、氏にもまだわからない。「やむにやまれぬ思い」というしかないという◆「津波とは波かとばかり思ひしがさにあらず横ざまにたけりくるふ瀑布ばくふ」に始まる119首は巨大な地震と津波、そして原発事故が巻き起こした混乱と不安の日々を記録した◆「かりそめに死者二万人などといふなかれ親あり子ありはらからあるを」「おびただしき死者を焼くべき焼き場さへ流されてしまひぬと町長の嘆き」◆「原発を制御不能の東電の右往左往の醜態あはれ」……首相、東電社長に対する厳しい歌もあり、「やむにやまれぬ思い」に共感する◆国のあり方を変えるほどの大震災に、詩歌も向かい合わなくてはという思いが響いてくる。「人々の嘆きみちみつるみちのくを心してゆけ桜前線」

(2011年4月19日13時57分 読売新聞)

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