Sunday, April 10, 2011

10/04 asahi 天声人語 - cuộc đời bể dâu

2011年4月10日(日)

 自然へのまなざしが優しかった歌人、木下利玄に次の作がある。〈根ざす地の温(ぬく)みを感じいちはやく空いろ花咲けりみちばた日なたに〉。もう一首〈夕づける風冷えそめぬみちばたの空いろ小花(おばな)みなみなつぼむ〉▼植物好きの方なら、この「空色の花」が何か、たちまちお分かりだろう。そうですオオイヌノフグリ。その名は「犬の股間の袋」の意味だ。先の小欄で「酷な名」と書いたら、「だからこそなじみ深いのです」といった便りを頂戴(ちょうだい)した。地味ながらこの花、やはりファンが多い▼まだ風の冷たい早春から、小さく愛らしく咲く。春の空を映したような四弁の花は、花の中心が白くなっている。ぱちりと瞳を開いたおさな子の利発さを、見る者に想像させる▼かつて、その名を不憫(ふびん)に思う人たちが「ほしのひとみ」という別名を提案したと、植物学者の長田武正さんが随筆に書いていた。長田さんは「こうなると今度はきれいごとすぎて、土の香りが欠けてしまう」。名前ひとつもなかなか難しい▼仰ぐ桜が盛りの東京で、屈(かが)み見れば地面で野草が春を告げている。タンポポの黄とスミレの紫が並び咲く図など、豪奢(ごうしゃ)な桜花に負けぬ気品がある。人間様の独断で「雑草」とひとからげにしては申し訳がない▼〈漁港古(ふ)り縄と菫(すみれ)と子供かな〉永島靖子。海の凪(な)いだうららかな午後だろうか。年年歳歳花相似たり、という。だが人の世の無常に身を切られるような今年の春だ。無心に咲いてそよぐ野の花に、知らず励まされている。

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