Monday, March 28, 2011

28/03 震災 教室で考えた

2011年3月28日

「日本にAISHITEMASUとメッセージを送ってきた海外のアーティストはだれ?」と話す生徒たち=24日、東京都葛飾区立本田中学校

原発事故を報じた新聞を示す杉浦真理教諭=17日、京都府宇治市の立命館宇治中学校
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 東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故に、教室で何を学ぶのか。新聞記事を読み合い、被災地が元気になれるプランをつくった東京都葛飾区立本田(ほんでん)中学校、チェーンメールやNPOのホームページから情報への向き合い方を考えた京都府宇治市の立命館宇治中学校。二つの授業を見た。

◆自分にできる行動探る

 24日、本田中の1年4組の教室の黒板に、12日から21日までの新聞の1面が張られた。「東日本大震災」「福島原発で爆発」「80歳と孫、9日ぶり救出」……。

 紙面の前に本山明教諭(56)が立つ。避難所に入った介護施設の高齢者を震災直後に書いた記事を示した後、同じ人々を追った1週間後の記事を読んだ。同じ施設の高齢者が1人また1人と亡くなっていく様子を描いた記事に、生徒は「悔しい」と唇をかんだ。

 震災の発生時、同校は体育館で総合学習の発表会の最中だった。電気が消え、泣き出す生徒もいるなか避難した。「だが、生徒はその後、震災をわがこととしてどこまで意識したのか。テレビの画面を流すように見ていただけではないか」と本山教諭。学年末の社会科の残る時間をすべて震災の授業にあてた。

 1回目の22日はまず被災地の人々を見つめた。教室でジャージー姿で行われた卒業式の記事やビルの上に乗り上げた船の空撮写真のコピーを配ると、生徒は食い入るように見つめた。「友達も服も失ってしまったんだな」「あちこちに豆粒みたいな人が写ってる。家族を捜しているんだ」と声が上がった。

 2回目の23日は中国や韓国からの支援や、海外メディアが日本人の冷静さをたたえたことを伝えた記事を読んだ。国際連帯の意味を知るのが狙いだ。

 そして、24日が3回目。生徒による「被災した方が少しでも元気になれるプラン」を本山教諭が紹介した。「私、家族、地域」「国、自治体」「世界」に分け、やれることを書いた。

 「私、家族、地域」で挙がったのは節電や、募金、毛布、ランドセルの送付、物を買い占めないこと、被災地の人のホームステイ先になること。「国、自治体」は正確な情報発信、食料の支援、公営住宅の提供、ペット預かり施設の設営、被災マニュアルの配布など。「世界」では、救助隊の派遣や、義援金、石油、そして笑顔が戻るメッセージを送ることが挙がった。

 「生徒会の募金に積極的に参加したい」「カイロや米、おむつを送りたい」。授業後、そんな感想がつづられた。「見つめること、そして行動することを伝えたかった」と本山教諭は話す。震災について自分の考えを600字以内でまとめること。それが春休みの宿題だ。

◆確かな情報の発信者へ

 17日、学年最後の地理の授業で震災をめぐる情報への接し方を考えたのは立命館宇治中の1年生。杉浦真理(しんり)教諭(47)が冒頭、1通のメールを紹介した。

 〈関西電力が東北電力に電力を提供するために、普段さしっぱなしの家電のコンセントを抜いて節電してほしい。それをできる限り広めてほしい〉

 多くの人に転送するよう求めるチェーンメールだ。杉浦教諭の家族の携帯電話にも届いた。

 「このメールに接したことのある人は?」。ほぼ全員の手が挙がる。「では、知り合いに転送した人は?」。今度はほとんどの子が手を挙げなかった。小学校時代、チェーンメールを決して転送しないよう教えられてきたという。関電もこのメールを発信していないとホームページで否定している。「チェーンメールはうそや」「来たらポイ」

 杉浦教諭は言った。「大人は転送した人が多いのに、すごい。不確かな情報を流してはいけない、ということだね」

 続いて、枝野幸男官房長官の原発事故についての記者会見の記事を採り上げた。「政府の言っていることは正しいかどうか、どうやって確かめる?」

 「別の新聞を読む」「テレビのコメンテーターの話を聞く」と生徒。杉浦教諭は原発に批判的なNPOのホームページを印字したものを配布した。「賛否両方の資料を比べることも大切だ」

 そして最後に配ったのが、ベストセラー「世界がもし100人の村だったら」のもとになった英文のメールだ。世界を100人の村にたとえ、文字の読めない人や栄養失調に苦しむ人が何人いるかで格差や貧困の現実を表現し、「このメッセージを人に伝えてほしい」と締めくくる。「人に広めて」と求める点では、震災の時のメールと同じだ。このメールも次々と転送され、世界をかけめぐった。

 もし自分に届いたらどうするか。杉浦教諭は自分もこのメールを受け取り、統計資料を調べて数字などが間違っていないことを確かめたうえで転送したと語り、そして訴えた。「むやみに転送しないことは大切だが、ただ捨てるだけでなく、内容によっては事実関係を確かめて判断してほしい。そして受け身から一歩進んで、自ら確かな情報を発信できる人になろう」

 生徒からは「どんな情報も1回疑ってみようと思う」「自分も、メールやツイッターで発信者になれるんだな、と思った」といった声が出た。(編集委員・氏岡真弓)

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