Thursday, April 14, 2011

12/04 余録:17世紀のロンドン大火は4日間にわたり…

 17世紀のロンドン大火は4日間にわたり全市街の9割近くを焼き尽くした。建築家レンによるその復興計画は木造建築を禁止しただけでない。広い街路と下水道網を整備し、危険で不潔だった大火前のロンドンを近代都市に一変させた▲「すべての歴史家はレンの名を筆にするが、彼の計画を妨害しようとした偏執小心の国会議員の名を忘れ去った」。こう書いたのは米歴史家のビアードで、関東大震災後に壮大な東京復興計画を打ち出した後藤新平への励ましの書簡の中でのことだ。彼は続けていう▲「貴下が計画を実行すれば、日本国民は先見と不撓(ふとう)の勇気ゆえに貴下を記憶するだろう。公園に遊ぶ幼児すらも貴下を祝福し、千年後の歴史家も貴下を祝福するだろう」。だが、後藤の計画は議会の反対で大幅に縮小された▲大災害からの立ち直りが単なる「復旧」ではなく、新しい文明のモデルを作り出すことも過去にはあった。大津波と原発災害が地域の暮らし全体を破壊した今度の震災の復興も、多かれ少なかれ過去の街づくりやエネルギー政策への厳しい問い直し抜きにはできまい▲発生から1カ月を経てまだ被害の全容も分からぬこの震災だ。「復興」という言葉もうとましく聞こえる被災者も多いに違いない。ただ、地域の再起は時間との闘いでもある。宮城県はいち早く復興基本計画の素案をまとめ、政府の「復興構想会議」も討議を始める▲復興プランは地元住民や団体からも提起されよう。「千年後」とはいわない。この痛恨の被災体験から子や孫らに末永く祝福されるビジョンを生み出せるのか。私たちの時代の先見と勇気が問われる。

毎日新聞 2011年4月12日 東京朝刊

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