Thursday, June 30, 2011

30/06 天声人語 - 震災から百カ日の「卒哭忌(そっこくき)」を過ぎて

2011年6月30日(木)付

悲しみの中にめぐる月日。震災から百カ日の「卒哭忌(そっこくき)」を過ぎて、暦はきょうで今年を折り返す。雨の向こうに明日を見たい6月の言葉から▼北限の茶摘みとされる岩手県陸前高田市の気仙茶(けせんちゃ)。被災で収穫が危ぶまれたが、地元の高校生の協力で一番茶を摘んだ。自宅を流されて諦めていたお茶農家の紺野隆治(りゅうじ)さん(96)は「茶摘みが出来てうれしい。必ず戻って、体が動く限り茶栽培を続けたい」▼仙台市の小中学校の約8万人が「仙台七夕まつり」の飾り作りを始めた。震災で自宅に住めなくなった山内優希さん(14)は「前向きに歩いていけるよう、きれいな吹き流しを作りたい。仙台はこんなに元気なんだぞって知ってもらいたい」。みちのくの夏を祭りが彩る▼将棋名人戦で、羽生善治名人を森内俊之九段(40)が下した。歴史に残る名勝負を制して「羽生さんは自分を一番引き上げてくれた人。羽生さんがいたから今の自分がある」。同い年の好敵手の言や良し▼「私はもう一度写真を見た/みんな笑っている/幸せそうに笑っている/愛する家族がいたはずだ/たくさんの夢があったはずだ」。沖縄の中2嘉味田朝香(かみだともか)さん(13)が、慰霊の日の戦没者追悼式で自作詩を朗読した。「奪った戦争を/私は許さない」と声は続いた▼11日に全国各地で脱原発のデモがあった。広島市の石井千穂さん(33)は3歳の長男を連れて参加した。「将来、あのとき何もせんかった、と悔やみたくないから」。誰もが真剣に、未来を考え始めている。

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