Monday, July 4, 2011

03/07 春秋 - 「衝撃的な映像や統計的な数字よりも、はるかに雄弁に現場の真実を伝えてくれた」

2011/7/3付

 「つなみってよくばりだなとおもいました」。宮城県気仙沼市の小学校1年生が、震災の日とその後の避難生活をつづった作文の一節だ。波にさらわれる。町から離れる。大切な友達が周りから消えていく寂しさが、短い表現から伝わる。
▼80人を超す子どもたちの手によるこうした体験記が一冊の本になった。妹の通う小学校まで駆けた兄は「人生でこんなにも全速力で走った事はない」と振り返る。母親を置いて山に逃げた罪悪感に泣く息子。前は欲しいものがたくさんあったのに今は何が欲しいかわからないという小学生。そんな生の言葉が並ぶ。
▼作家の吉村昭氏が昭和45年に出版した記録文学「三陸海岸大津波」が、昭和初めの大津波を体験した子どもたちの文を紹介している。この本に着想を得たジャーナリストの森健さんが、避難所を訪れ作文を依頼して回った。子どもの素朴な文章こそ津波の恐ろしさを生々しく伝えられる。そう感じたからだという。
▼集まった作品は「衝撃的な映像や統計的な数字よりも、はるかに雄弁に現場の真実を伝えてくれた」と森さん。忘れたい思いをあえて記憶し、語り継ぐことが未来の命を守る。津波や地震の怖さを、日本中の人に伝えてほしい。いつか自分の子や孫にも伝えたい。作文を書いた子供たちは、そう語っていたそうだ。

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