Tuesday, July 26, 2011

26/07 天声人語

2011年7月26日(火)付

 日本の新聞は「愛国的」で、海外の事件事故をトップ級で伝えることは少ない。先週末、それが珍しく続いた。ノルウェーの連続テロ、中国高速鉄道の衝突事故だ。一報に接した印象は前者は「まさか」、後者は「やっぱり」だった▼乱射と爆破で約80人を殺害した容疑者の男(32)は、イスラム教に敵意を燃やす極右だという。ゆがんだ憎悪は、移民に寛容な現政権に向けられた。平和が薫る国での暴発は不気味だ▼列車事故も悲惨だが、テロほどの意外性はない。ざっくり言えば、メンツで急いだ高速化のツケ。発展の順序を踏まない、国家による「スピード違反」である。雷神の気まぐれで脱線するような代物に、人民を乗せてはいけない▼半世紀で新幹線網を整えた日本に対し、中国はその4倍を数年で敷いた。内外の技術を足し合わせる突貫工事がたたって、自慢の北京―上海間も故障続きという。「日本の技術を盗んでいないことが証明された」。自嘲と怒りがネット上にあふれる▼当局は現場検証もそこそこに、運転を再開させた。原因究明の鍵とおぼしき先頭車両は、運転席ごと埋めてしまった。汚職も絡み、強権体制の下で命を惜しむのは河清をまつがごとし。日本に生まれた幸運を思う▼無論、弱い政権で助かったという意味ではない。福島の原発事故が世界に急報された時、技術力を知る親日家の反応は「まさか」、脱原発派は「やはり」だった。両者は今、政治不在の中でもがく国民にそろって同情を寄せている。

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